丸岡城は福井県坂井市にあります。「現存12天守」と呼ばれる、江戸時代以前に築城され今も残っている城のひとつです。「現存12天守」の中でも北陸地方では丸岡城だけが残っており、国の重要文化財にも指定されています。また「日本100名城」にも選ばれています。
そんな歴史あるお城の歴史や見どころ、そして周辺の観光情報をまとめてみました。
協力:丸岡城管理事務所/坂井市教育委員会 丸岡城国宝化推進室/DMOさかい観光局/坂井市役所 丸岡支所
1. 丸岡城の見どころ
丸岡城はそんなに大きなお城ではありませんし、建築物は天守しか残っていませんが、見どころはたくさんあります。じっくり見ていきましょう。
1-1. 城内-構造と階段に特徴あり

丸岡城天守の階段(写真:PIXTA)
丸岡城は標高27mの小さな丘に建っています。かつては五角形の内堀に囲まれた中に本丸、二の丸がありました。内堀は明治になってすべて埋められています。昔の外堀の一部は田島川として残っています。
天守台石垣は約6.2m。二層三階建てで、一階と二、三階の間に通し柱はありません。内部には階段があり、一階から二階が65度、二階から三階が67度と大変急な階段となっています。階段にはのぼりやすいようロープが備え付けられています。
天守の一番高いところは城山のふもとから約35mの高さとなり、四方に大きな窓がついているため、いい眺めを楽しめます。特に西側は坂井平野が一望できます。

天守最上階からの眺め(写真:PIXTA)
1-2. 城外-屋根瓦と「石落とし」、公園内の碑に注目

丸岡城天守の石瓦(写真提供:坂井市)
北陸は冬寒く雪の多い地域です。そのため屋根瓦は地元・福井で採れる笏谷石(しゃくだにいし)などを用いた石瓦が使われています。石瓦は凍っても割れにくいので、丸岡城に適しているのです。石瓦の天守は大変珍しく、現存天守では丸岡城だけです。戦時中の一時期は鯱(しゃちほこ)も石製でしたが、現在はおろされています。また天守と天守台の間に小さな屋根が付いています。これは雨水が天守台に入り込むのを防ぐためです。
天守の一階に出窓のような部分があり、石落としと呼ばれます。左右のようすを伺うのに都合がよく、また石垣を登ってくる敵に石を落としたり、弓や鉄砲を撃ったりするときに使われました。

出窓のように張り出しているのが「石落とし」(写真:PIXTA)
天守台石垣は「野面積み」という自然石をそのまま利用して積み上げる、古い形です。隙間が多く、敵に登られやすいという欠点もありますが、排水性に優れているため、頑丈な作りとなっています。

美しく積まれた丸岡城の石垣(写真:PIXTA)
丸岡城は別名を「霞ヶ城(かすみがじょう)」といい、天守の周辺は現在、霞ヶ城公園となっています。「霞ヶ城」という別名は、合戦時に不利な状況になるたびに、井戸から大蛇が現れて霞を吹き、城を隠し危機を救ったという伝説からきたとも言われています。
園内には日本一短い手紙として有名な、本多作左衛門重次(ほんだ さくざえもん しげつぐ)が陣中から妻に宛てた「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」の碑があります。この手紙の「お仙」とは、重次の長男で後に丸岡城主になる本多成重のことです。家を守り、家族を愛し、忠義を尽くす思いがこもった短い手紙です。

霞ヶ城公園内にある「一筆啓上〜〜」の碑(写真:福井県観光連盟)
霞ヶ城公園内には400本もの桜が植えられており「日本のさくら名所100選」にも認定されています。
1-3. 御城印
丸岡城の御城印は通常版と、季節ごとに変わる期間限定版とがあります。筆文字と朱印だけではなく、季節ごとにカラフルな絵の印が押してあります。また「丸岡城」と書かれたものと、日本一短い手紙で有名な「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」の2種類があります。どちらも1枚300円(2023年1月時点)で、丸岡城券売所窓口で購入できます。お寺の御朱印はその場で書いてもらうことが多いのですが、御城印の多くはすでに書かれているものが販売されています。
また、「重ね捺し御城印スタンプラリー」が2022年(令和4年)3月から始まりました。5つの柄が違うスタンプを重ね捺しすることで、オリジナルの御城印が完成します。丸岡城券売所、一筆啓上茶屋、一筆啓上日本一短い手紙の館、國神神社、城小屋マルコの5カ所をまわると完成するため、効率よく観光できます。
2. 国宝化推進事業について

丸岡城発掘調査のようす(写真提供:坂井市)
丸岡城天守は1934年(昭和9年)に国宝保存法に基づいて「国宝(旧国宝)」に指定され、1950年(昭和25年)には文化財保護法の改正により、「重要文化財」へと名称が変わりました。1948(昭和23年)の福井地震で天守は倒壊しましたが、1955年(昭和30年)には元の部材を利用して再建されました。
坂井市では2015年(平成27年)に丸岡城国宝化推進事業を立ち上げ丸岡城国宝化推進室を設置し、活動を行っています。国宝化に向けて、調査・発掘などを行い、講演会やシンポジウムなども定期的に開催。その成果として、「丸岡城天守学術調査報告書」、丸岡城調査研究パンフレット『知られざる丸岡城』(vol.1~9)を発刊しています。また2016年(平成28年)には「丸岡城天守を国宝にする市民の会」が発足しました。
3. 丸岡城の歴史

福井大地震で倒壊する前の丸岡城(写真提供:坂井市)
戦国〜江戸初期:築城とたび重なる城主交代
1575年(天正3年)、織田信長は越前(現在の福井県北東部)の一向一揆(※1)を平定し、家臣の柴田勝家(しばた かついえ)に越前の支配を任せました。翌1576年(天正4年)に勝家の甥で養子となっていた勝豊(かつとよ)が、現在の地にお城を築城したと伝わります。これが丸岡城のはじまりです。
1582年(天正10年)、織田信長が死去し、跡継ぎを決める清須会議により、柴田勝豊は近江国(現在の滋賀県)に移ることに。柴田勝家は重臣の安井家清(やすい いえきよ)を丸岡城の城主としました。
しかし1583年(天正11年)に起きた賤ヶ岳の戦い(※2)で柴田勝家が豊臣秀吉に負けたことで、越前国は豊臣秀吉方の丹羽長秀(にわ ながひで)が治めることになりました。丹羽長秀は家臣の青山宗勝(あおやま むねかつ)を丸岡城の城主とします。
その後関ヶ原の戦いにおいて西軍であった青山宗勝は城主の座を追われ、越前一国は徳川家康の次男で福井藩の初代藩主・結城秀康(ゆうき ひでやす)に与えられました。これにより、丸岡城は福井藩の有力家臣が居住する城となり、家老だった今村盛次(いまむら もりつぐ)が入城しました。しかし今村盛次は1612年(慶長17年)に起きた、福井藩内の派閥争いにより失脚。
新たに家老となった本多成重が城主に迎えられました。
※1 一向一揆:当時急速に広まっていた、浄土真宗の信者たちを中心とした蜂起
※2 賤ヶ岳の戦い(しずがたけのたたかい):羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)と柴田勝家の戦い。現在の滋賀県長浜市・賤ヶ岳付近で起きた
江戸前期〜中期:本多家時代
1624年(寛永元年)、福井藩から独立して丸岡藩が成立。福井藩の附家老(つけがろう)として城主をつとめていた本多成重が初代丸岡藩主となりました。近年の調査によって、現在の丸岡城天守は本多成重が藩主の時代に造られたことが分かっています。
この初代藩主・成重の父である本多重次(ほんだ しげつぐ)が陣中から妻へ宛てた手紙が、「日本一短い手紙」として有名な「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」です。この手紙の「お仙」というのが、幼名を仙千代といった成重のことです。
本多家は丸岡藩を4代にわたって治めますが、4代目重益(しげます)の頃、政治が乱れ始めます。重益は政治を軽んじていたため、家臣の間で内部抗争が起こり、幕府によって処分されてしまったのです。
江戸中期〜後期:有馬家時代
1695年(元禄8年)に有馬清純(ありま きよすみ)が丸岡藩の藩主となりました。このあと1869年(明治2年)まで、8代にわたって有馬氏を城主とした時代が続きます。
1711年(正徳元年)、2代藩主・有馬一準(ありま かずのり)は外様大名から譜代大名へ格上げされます。5代藩主・有馬誉純(ありま しげずみ/なずみ)は若年寄となり、1772年(安永元年)から50年間丸岡藩を治め、政治改革を行って藩政を安定させました。藩士専用の学校である平章館を設立したのも誉純です。平章館は越前国(福井県)最初の藩校です。また誉純は藩史・地誌の編纂に着手し、文化面でも大いに尽力しました。
8代藩主・有馬道純(ありま みちずみ)は老中という幕府の要職に就任しました。しかし明治維新が起こり、1871年(明治4年)9月の廃藩置県により、丸岡藩は廃藩となります。
昭和〜:地震による倒壊と再建
1948年(昭和23年)の福井大地震で天守は倒壊してしまいましたが、元の部材を70%以上再利用し組み直して1955年(昭和30年)に再建されました。

地震により倒壊した丸岡城の修理(写真提供:坂井市)
4. 丸岡城の基本情報・アクセス・駐車場
●住所 :福井県坂井市丸岡町霞町1-59
●開館時間:8:30〜17:00(最終入場16:30)
●休館 :無休
●入場料 :入城料大人450円
●アクセス:
①JR北陸本線「福井」駅から京福バス・丸岡線に乗車。「丸岡城」バス停下車
②JR北陸本線「丸岡」駅から京福バス・丸岡永平寺線に乗車。「丸岡バスターミナル」下車、徒歩10分
③JR北陸本線「芦原温泉」駅から京福バス・長野線または芦原丸岡永平寺線/芦原丸岡線に乗車。「丸岡バスターミナル」下車、徒歩10分
●駐車場 :一筆啓上茶屋前駐車場(40台)/一筆啓上日本一短い手紙の館北駐車場(140台)
●公式サイト:丸岡城 公式サイト
※2023年2月時点の情報です。
5. 周辺イベント情報
丸岡城桜まつり(4月上旬)

桜まつり期間中、ライトアップされた丸岡城(写真:PIXTA)
毎年4月には「丸岡城桜まつり」が開催されます。桜まつりの期間中は約300個のぼんぼりが点灯され、とても幻想的で美しい丸岡城を見られます。
■関連サイト:丸岡城桜まつり(2023年)
丸岡古城まつり(10月上旬)

丸岡古城まつりのメインイベントは武将たちのパレード(写真:福井県観光連盟)
丸岡城周辺で開催される観光祭りで、メインは武将姿の行列「五万石パレード」です。からくり人形山車や子ども奴など400人を従えて練り歩きます。
■関連サイト:丸岡古城まつり(2022年)
坂井市古城マラソン
坂井市で開催される市民参加型のマラソン大会です。2キロからハーフマラソンまで5つのコースがあります。霞ヶ城公園ふれあい広場がスタートとゴールになります。
■関連サイト:古城マラソン-坂井市スポーツ協会
プロジェクションマッピング

毎日20時と21時に上映される「ヒカリ結び」(写真:坂井市丸岡支所)
2021年(令和3年)3月31日から丸岡城プロジェクションマッピングナイト「ヒカリ結び」が行われています。上映内容は季節ごとに変わります。丸岡城天守がプロジェクションマッピングによって新たな魅力を生み出します。上映時間は各回15分。
■関連サイト:丸岡城プロジェクションマッピングナイト「ヒカリ結び」
※6月21日、6月28日、7月7日の3日のみ、環境省が地球温暖化対策として展開するライトダウンキャンペーン賛同のため、上映を休止しています。
6. 周辺観光スポット
一筆啓上 日本一短い手紙の館

展示室のようす(写真:福井県観光連盟)
丸岡城の有名な日本一短い手紙にちなんで、「一筆啓上賞」という日本一短い手紙のコンクールが1993年(平成5年)に始まりました。ここでは一筆啓上賞の歴史と、これまでの入賞作品を見られます。
【Infomation】
住所:福井県坂井市丸岡町霞町3-10-1
公式サイト:一筆啓上 日本一短い手紙の館
丸岡歴史民俗資料館

丸岡歴史民俗資料館は丸岡城そばにあります(写真:PIXTA)
霞ヶ城公園内にある丸岡歴史民俗資料館では、歴代の丸岡城主ゆかりの品々などが見られます。2019年(平成31年)3月にリニューアルされました。
【Infomation】
住所:福井県坂井市丸岡町霞4-12 霞ヶ城公園内
関連サイト:丸岡歴史民族資料館(Web旅ガイド坂井)
千古の家

里山に溶け込むようにたたずむ千古の家(写真:福井県観光連盟)
江戸時代初期に建てられたとされる、民家としては県内最古の建物で、国指定重要文化財です。特徴的な造りと当時の地方豪族の生活を知ることができます。
【Infomation】
住所:福井県坂井市丸岡町上竹田30−11
公式サイト:千古の家
竹田水車メロディーパーク

竹田水車メロディーパークの水車(写真:PIXTA)
北陸最大級の直径8メートルと5メートルの2連水車があり、日中は毎時0分と30分になると美しいメロディが響き渡ります。山里の中で、四季折々の自然を堪能できる憩いのスポットです。
【Infomation】
住所:福井県坂井市丸岡町山口64-30
関連サイト:竹田水車メロディーパーク
永平寺

永平寺の傘松閣(さんしょうかく)。天井には230枚もの日本画が描かれています(写真提供:大本山永平寺)
丸岡城からは少し離れていますが、ぜひ訪ねたいお寺です。永平寺は道元(1200~1253)が建てた曹洞宗の大本山で、禅の修行道場です。大変厳しい修行のお寺として知られています。
【Infomation】
住所:福井県吉田郡永平寺町志比5-15
公式サイト:大本山 永平寺
東尋坊

奇岩が作る迫力満点の光景(写真:PIXTA)
東尋坊は丸岡城がある坂井市の日本海側に位置し、国の名勝・天然記念物に指定されています。魅力は豪快な景観。高さ約20メートルの柱状節理と呼ばれる岩が約1キロメートルに渡り広がります。海上から見上げられる遊覧船もあります。
【Infomation】
住所:福井県坂井市三国町東尋坊
関連サイト:東尋坊(Web旅ガイド坂井)
7. 「坂井市といったら?」訪れる前に知っておきたい豆知識
豆知識① 北前船の寄港地だった

往時の面影を残す三国湊(写真:福井県観光連盟)
坂井市三国町の三国湊は昔から水運・海運で栄え、江戸中期になると北前船の寄港地となり、町は大きく発展しました。三国にはその面影が色濃く残っています。町家や豪商の屋敷などが残るレトロな雰囲気に現代的要素を取り入れたレトロモダンな街として人気があります。
豆知識② 越前ならではの絶品グルメ
北陸は美味しいものがたくさんあります。ごく一部ですがご紹介します。
越前がに

甘くひきしまった身が特徴の越前がに(写真:福井県観光連盟)
冬の味覚の王者と呼ばれる越前がに。越前がにとは、福井県の漁港に水揚げされた雄のズワイガニのことです。雌の場合はセイコガニと言います。漁期は晩秋〜冬頃。越前がにの脚には、その証として黄色いタグが付けられます。
甘えび

獲れたてで新鮮な甘えびは濃厚な粘りと甘みがあります(写真:福井県観光連盟)
日本海のいたるところで甘えびは獲れますが、三国港沖合で獲れる甘えびは、寒流と暖流が交わり、餌となる良質なプランクトンが豊富な場所で育つため、特に甘くておいしいと言われています。そのまま刺身で食べたり、寿司で食べたり。甘えびは通年で食べられます。
おろしそば

福井県内では大晦日の年越しそばとしても定番のおろしそば(写真:福井県観光連盟)
丸岡産のそばは、福井名物おろしそばで食べるのが絶品です。茹でて水でしめたそばに冷たいつゆをかけ、大根おろしとカツオ節、ねぎなどをのせて食べます。ちなみに坂井市で主流なのは辛味大根を使ったおろしそば。「越前坂井辛みそば」とも呼ばれます。
まとめ
丸岡城のある坂井市は東尋坊や三国湊など有名な観光名所も多く、温泉もあるので、フリーきっぷなどを使えば有意義に時間を過ごせます。歴史と文化、そして美味しいものは観光に欠かせません。現存十二天守のひとつ、日本100名城のひとつである丸岡城も歴史と文化を大いに感じさせてくれるでしょう。