スーパーなどでよく目にする「土用の丑の日」の文字。なんとなくうなぎを食べるということは知っていても、なぜそのような文化が生まれたのか、どうしてうなぎを食べるのか、という意味や歴史はなかなか知らないはずです。
2022年の「土用の丑の日」は、7月23日の土曜日。
今回はそもそも「土用」ってなに?という人のために、その由来やうなぎ以外の風習について紹介します。
土用の丑の日とは?
「土用」の意味

夏の丑の日のイメージのうちわ
「土用」とは立春、立夏、立秋、立冬直前の約18日間を指す言葉。古代中国の陰陽五行説(いんようごぎょうしそう)において、「この世のすべては、木・火・土・金・水の5つの要素でできている」とされてきました。
それを季節に当てはめた場合、木は新緑の春、火は燃えるような熱さから夏、金は実りをあらわす秋、水の流れる音のように静かな冬となり、余った「土」を季節の変わり目に割り当て「土用」と呼ぶように。
これらのことから土用は年に4回ありますが、夏の土用は梅雨明けや暑さから体調を崩しやすい、ということで最も重要視されるようになったのです。
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「丑の日」の意味

十二支と丑の日の関係とは?
では「丑の日」とは?というと、実は干支の十二支からきているんです。十二支は年にもありますが日にもあり、こちらでは日にちを十二支に割り当てた「丑」の日のことを指します。
すると約18日間の土用の期間中に丑の日が1〜2回発生。これが土用の丑の日というわけです。
2022年の「土用の丑の日」はいつ?

7月のカレンダーで丑の日を確認しよう
2022年の土用の丑の日は、7月23日(土)となっています。
また上記のことを踏まえると、土用の丑の日は以下のように毎年日付が異なります。
2022年7月23日(土)、8月4日(木)
2023年7月30日(日)
2024年7月24日(水)、8月5日(月)
2025年7月19日(土)、7月31日(木)
「土用の丑の日」はいつから?

丑の日によく見るうなぎと書かれている旗
そもそも「土用の丑の日とはいつからあるの?」「うなぎを食べる風習ができたのはいつから?」と気になったそこのあなた。時代は江戸時代まで遡ります。
古代より「うなぎは栄養価が高く精がつく食べ物」として知られてきましたが、本来うなぎは冬が旬とされていて、夏のうなぎは身が痩せて人気がありませんでした。
それ以前に夏の暑い時期に脂っぽい魚であるうなぎを食べるなんて、という考えが普通だったのです。
そこで讃岐国出身の蘭学者である「平賀源内」が、「夏にもうなぎを売りたい」と近所のうなぎ屋から相談を受けました。その後平賀源内はうなぎ屋の壁に「本日土用の丑」という張り紙を貼り、そこから土用の丑の日にはうなぎを食べる、という風習ができたのだそう。
この平賀源内の説が最も有名だとされています。
なぜ土用の丑の日にはうなぎを食べるの?

丑の日に食べるウナギ
ここで気になるのが、「土用の丑の日だからってなぜうなぎを食べる必要があるの?」ということ。実は夏にうなぎを食べるという習慣は古くからあり、万葉集には下記のような和歌があります。
「石麻呂に吾(われ)物申す夏痩せに良しといふ物ぞ鰻(むなぎ)漁(と)り食(め)せ」
訳としては「夏痩せにはうなぎが良いらしいから、とってきて食べなよ」と、石麻呂という人に勧めている内容です。
実際うなぎにはビタミンAやビタミンB郡など、疲労回復や食欲増進などに効果的な成分が含まれており、上記の歌も理にかなっていますね。
このような昔の人の知恵や含まれる成分から、土用の丑の日にはうなぎを食べるという風習ができたのだそう。
夏バテ予防にはうなぎ以外の食材でも!

夏バテ防止のために丑の日にうなぎを食べる
夏の土用の丑の日には「う」のつく食べ物を食べると夏負けしないという言い伝えがあり、うなぎはその代表例。しかし他にも夏バテ予防に最適と言われている食べ物はたくさんあります。
うどん

丑の日に冷やしうどんを食べる
さっぱりとしていて喉越しが良く、食欲のない時でもツルッと食べられる「うどん」。高い栄養価と消化も良いことから、夏にはとても重宝されています。
夏には冷たいうどんに、ネギやミョウガなどの薬味を加えると食欲が増進されなお良いでしょう。
梅干し

丑の日に梅干しを食べる
クエン酸をたっぷりと含んだ「梅干し」。「疲れているときには酸っぱいもの」というように、クエン酸は柑橘類の酸っぱさと同じ成分で、疲労回復に効果的とされています。
ウリ類

丑の日にきゅうりを食べる
夏に旬を迎える、きゅうりやスイカ、カボチャ、ゴーヤ、ズッキーニなどのウリ類。栄養価が高く、利尿作用で体内を整えたり体の熱を取ったりと、夏にピッタリの食材です。
またウリ類はカリウムを多く含みます。カリウムは汗や排せつとともに体外へ出されてしまうもので、特に夏にはカリウムが不足しがち。
すると筋肉疲労が溜まりやすくなったり、食欲が減退したりといわゆる夏バテ状態となります。これらを防ぐためにもカリウムを多く含むウリ類を食べることが効果的。
土用しじみ

丑の日にしじみを食べる
オルニチンというアミノ酸を豊富に含み、夏と冬の2回旬を迎える「しじみ」。しじみの産卵期は夏で、高い栄養価から夏バテ防止に適していることから「土用しじみ」として夏に重宝されています。
土用卵

丑の日に卵を食べる
昔から滋養食として食べられるほど栄養価の高い「卵」。土用の夏の時期に生まれた卵は栄養豊富だということから、「土用卵」と呼ばれるようになりました。
土用の丑の日には他にもこんな風習がある!

風で揺れる風鈴
食べ物以外にも、土用の丑の日にはさまざまな風習があります。こちらでは夏の丑の日に役に立つ風習について紹介します。
土用干し

丑の日に衣類を外に乾かしている様子
夏の土用入りは梅雨明けと重なるため、衣類や書物を風にあて湿気をとる風習があり、これを「土用干し」と言います。土用の時期に陰干しすることで虫に食われないようになる、という言い伝えから「土用の虫干し」と呼ぶことも。
丑湯

丑の日によもぎが入ったお湯に浸かる
土用の丑の日に薬草を入れたお風呂に浸かる風習を「丑湯」と言います。江戸時代には桃の葉を入れたり、よもぎ、緑茶、ドクダミも薬草として使われていたのだとか。
夏はパパッとシャワーだけで済ませがちですが、暑い夏こそお風呂にしっかりと浸かり、疲れを取ることをオススメします。
きゅうり加持

丑の日にきゅうり加持を行う
梅雨が明け本格的な暑さが始まる土用の丑の日に、無事に夏を乗り越えられるようにと寺院で行われる「きゅうり加持」。
きゅうりの中に災いや病気を封じ込める祈祷を行い土に埋めます。その埋めたきゅうりが土に還る時、災いも一緒に消えるのだとか。
うなぎを食べて夏を乗り切ろう!
今回は意外と知らない「土用の丑の日」について紹介しました。うなぎを食べる理由や、その他の風習などについてもそれぞれ意味があるんですね。
暑い夏を乗り切るためにも、夏の風習である土用の丑の日をしっかりと理解しておきましょう!